崖っぷち犬「リキ」と呼べば、あのカヌーイストの野田知佑氏の愛犬、カヌー犬「ガク」を思い出すが、リキは、猟犬にされるのがいやで飼い主から逃げ出し、挙げ句の果て崖に迷い込み、全国に崖っぷち犬と言う称号を知らしめた情けないヤツなのだ。
 

2000.7.12の夕方、山岳プロガイドの舟橋さんから電話があって、うちの奥さんが受けた。
「ニュース見ました?」 いえ、見てませんけど・・・
「犬を助けに行きませんか?」
 な、何のこと?
どうも、奈良の室生の断崖絶壁に犬が遭難し、助けることが出来ず、ニュースになっているらしい。
こっちは何も知らないし、仕事が詰まっていて時間もない。舟橋さんも最後にちらっとニュースを見ただけ。しかし、偶然にもレポートをしていたのが、舟橋さんの友達の、放送カメラマンT君だった。連絡を取ってみるとFaxで返事が来た。「約2週間崖にいて飲まず食わず、衰弱していて猶予はない」と書かれ、様子を伝える絵が描かれていて下の沢から約5ピッチぐらいと説明があった。でも、絵がうますぎて様子が良くわからない(ゴメン)。その後、舟橋さんからもう一度電話が・・・。「一人でも行くけど装備もたくさんいるし、犬のことだし、一緒に行けませんか?」 迷わず行きますと返事をした。2週間飲まず食わずのフレーズが決断させたのだ。T君達マスコミは、9時に現地に来ると言ってたので朝方に救助を始めて犬を引き渡してさっさと帰ることで決定。それなら昼から仕事も出来る。もし地元の山岳会などが来ていたら、譲って帰ることにした。
ボブの、強そうなハーネス、ドッグフード、神経を和らげるハーブ(バッチレスキューレメディ)、ボブとロージィを助けた「にがり」、水など考えられる物を用意し、明日に備えて帰宅。12時頃になってしまって寝ようと思ったらテレビでやしきたかじんと藤山直美のツーショットで番組をやっていて、思わず見てしまった。小学校で、つっこみの練習をするという大阪人の性か――。(ウソですよ)


ほんの少し仮眠をし、まだ暗いうちから家を出て、大阪→西宮→奈良、室生という効率の悪いルートで現地に向かった。メンバーは僕、うちの奥さんとロージィ、舟橋さんだ。朝6時頃現地に着いた。犬の情けない声が聞こえる。道路の対岸を木の間からのぞくと、とんでもないところに犬の姿があり、想像を遙かに超える物だった。なぜあんな所にいるのか全く考えられない光景だ。

早速下見をしに、舟橋さんと谷に降りた。そこは龍穴神社があり、由緒正しいところだ。辰年にこの場所、この事件。いつも、山と犬に遊んでもらっている者へ神が与えた試練なのか。そんなことを考えながら上へ戻ると、保健所の人が待っていた。犬が心配で毎朝様子を見に来ているという。公務員にもこんな人がいるのか感心した。実は、今日は奈良山岳会に依頼をして9時に集まる予定らしい。それなら譲ろうとしたが、舟橋さんがプロと言うことで山岳会と合流してほしいと頼まれた。面識のない人とパーティを組むのは避けたい。しかし、警察も来るので待ってほしいと頼まれ仕方なく道具を広げながら待つことになった。そのうち東京の放送局もやってきて準備を始め、だんだんギャラリーが増えてきた


3時間弱待って、山岳会の方達が来られた。車から降りるなり「やぁ、舟橋さんご無沙汰ですー。」と挨拶。さすが山の世界では有名人だ。すぐに舟橋さんがリードを取ることに決まった。今日までに消防署、警察署が出動し、警察はヘリまで飛ばし上空から写真まで撮った。写真を見ながら、ルートや、メンバーの打ち合わせをする。保健所からは確保用のワイヤー、暴れたときの注射器(長い棒の先に付いている)などを渡された。打ち合わせ、各自の準備が終了し、救出に向かうことにした。


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 崖っぷち犬 「リキ」